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    渡航者の安全祈願『アメリカ籠もり』

     去る2月15日(日)、真網代・住吉神社で行われた第2回ふるさと講座の終了後、地域文化振興協議会「北針(きたばり)」松浦有毅会長さんによるアメリカ籠(ご)もりの説明と、そのあと神事が執り行われました

     真穴かるた巡りの第2回目は【は】『アメリカ籠もり』です。

      同胞(はらから)の 幸せ祈る アメリカ講

     『明治時代、真穴をはじめ渡航熱は近隣の村々にも広がった。明治38年には、アメリカ渡航者の家族を中心とする人たちによって、渡航者の無事を祈るアメリカ講「萬歳講」が作られていた。年に何度か渡航者の家族が氏神様に集まり、お籠りをして宮司さんにお札やお守りを作ってもらい、それをアメリカで働く家族の元に送った。アメリカ講は、海外渡航者を出した各集落ごとに行われた』(「真穴かるた」解説全文)

     アメリカ籠もりにふれあう 


     真穴は明治30年前後から大正にかけて、多くのアメリカ移民を輩出した地として知られています。1回目の真穴かるた巡りでご紹介した真網代・源蔵前の浜から、大正2年に打瀬船(うたせぶね)「天神丸」に乗ってアメリカ大陸を目指し上陸を果たした若者15人のフロンティア精神は、現代でも語り継がれていて、この日ふるさと講座に参加した子どもたちの中には少なからず知っている子もいます。しかし、アメリカ籠もりについては触れられる機会も少ないことから、この日のまさに住吉神社で「北針」松浦会長さんからお話を聴けたことは、とても貴重な体験となりました。

    アメリカ1 アメリカ2
    【写真左】お話をされる「北針」松浦有毅会長さん。
    【写真右】昨年10月、「北針」さんが愛媛県公民館連合会より優良団体として表彰されました。
         神事に先立ち、松良昭子真穴地区公民館長による授与式が行なわれました。


     カメリカ講の今 


     八幡浜周辺やここ真穴でも渡航者の家族を中心にアメリカ講と呼ばれる「講」が組まれ、神社(真網代は住吉神社、穴井は天満神社)で渡航の安全と現地での健康と成功を祈願する御籠りが行われました。真網代では「アメリカ籠(ご)もり」、穴井では「萬歳講(ばんざいこう)」と呼ばれています。記録に残る明治38年から現在まで110年続いていますが、穴井の萬歳講は戦後しばらくして中止しています。真網代でも時代とともに移住地と疎遠になりがちになり、中止が危ぶまれた時に「北針」さんが立ち上がり現在に至っています。

     渡航者と真穴の発展 


     「真穴の座敷雛の歴史」の中でも触れましたが、成功された渡米者からの寄付や仕送りなどで真穴は裕福になり、座敷雛が連綿と続く要因の一つとなりました。また、松浦会長さんの説明によると、移住された方の多くは帰国され、帰国後はアメリカの文化・産業・生活様式など進歩的なものを真穴にも取り入れることが多かったそうです。

     その一つに『アメリカは道が広いので何をしても楽だ。真穴にも道を付ければ良いのに』という話が、昭和8年に着工し、後に1億円道路と呼ばれる全長18kmの農道の整備が進んだことのきっかけとなったことは、とても興味深いお話でした。明治33年に導入された温州みかんは、昭和39年にみかん産地で初の天皇杯を授かり、真穴が真穴みかんというブランドみかんの一大産地にまで発展したことに、この早期の農道の整備が大きく貢献していることは想像するに難くありません。

     「我々(北針)が継承するにあたって、このアメリカ渡航やアメリカ籠もりは地域の歴史であり誇りでもありますから、これから育っていく子どもたちにも郷土の一つの誇りとして持ってもらい、アメリカで苦労して働いた人たちの足跡もわかってもらえたらとの思いです。」

     以上、ご紹介できたのは一部です。「北針」設立3年後の平成8年の、先の天神丸の上陸地点カリフォルニア州ポイント・アレナ市での記念碑除幕式に参列された時の様子など、他にもたくさんのお話をしていただきました。参加した低学年の子どもたちには少し難しかったかも知れませんが、良い勉強になりましたネ(私もですが)

                     =参考資料=2014年2月16日付愛媛新聞記事、他)

     アメリカ籠もりの神事 


    アメリカ3
     会長さんのお話の後、関係者のみによるアメリカ籠もりの神事、祈願祭が厳かに執り行われました。明治38年に渡航された方々の名簿と写真が祭壇に並べられ、40余名の方々のお名前が一人ずつ読み上げられ、健康と安全を祈願しお守りが渡されました。このあと場所を移動して「直会(なおらい)」が行なわれ、今年のアメリカ籠もりは終了いたしました。
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