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    from Ma-ana district,
    Yawatahama City,Ehime Prefecture.

    アオノリュウゼツランの花

     数十年かけて成長したのち、1度だけ花を咲かせると枯れてしまう、ミステリアスな大型植物「アオノリュウゼツラン」。原産地では10~20年で花が咲くそうですが、日本では30~50年(中には80年)かかってやっと花が咲くそうです。 

     リュウゼツラン科リュウゼツラン属の熱帯植物で、主な原産地はメキシコ。名前にランと付いていますがラン科でもなく、アロエ(エルボラン科)でもサボテン(サボテン科)でもありません。
     (花の構造による以前の分類体系ではユリ科とされ、その後はリュウゼツラン科、そして最新のDNA解析によるAPG体系Ⅲと呼ばれる植物分類体系ではキジカクシ科リュウゼツラン亜科リュウゼツラン属に分類されています。)

     そのアオノリュウゼツランが八幡浜市沿岸部最南端、穴井の頃時鼻(コロトキバナ:通称ウドノハナ)で咲き始めました。

     きまぐれ真穴撮り歩き第11弾は“穴井・頃時鼻に咲くミステリアス・リュウゼツラン”

    リュウゼツラン1 りゅうぜつらん2 リュウゼツラン2
     6月24日、住民の方から「珍しい植物が花を咲かせよるで」との情報をもらい、さっそく現地へ行ってみました。

     なんということでしょう! 国道378号沿いの切り立った崖に存在感を誇示するかのように7mほどの花茎(マスト)が天を突き刺すように伸びているではありませんか。気がつくと少し興奮気味にシャッターを押していました。

    リュウゼツラン4
     なぜこんなところにこんな植物が、誰がいつ植えたのか捨てたのか、しかもこれほどまでに群生していようとは、マストが伸びてその存在に初めて気づいた人ばかり、謎多きアオノリュウゼツランです。

     何株生えているのか調べようにも命綱を着けて崖を降りなくてはならず、人を近づけない雰囲気すら漂わせています。これから花が咲いていく様子をコマ目に撮影していこうと思った矢先に、ソウズの浜付近でがけ崩れ、通行止めになってしまいました。なんともミステリアス続きのアオノリュウゼツランです。

    リュウゼツラン6
     リュウゼツラン・・・漢字で書くと「竜舌蘭」。葉の形状が竜の舌のように見えることから。蘭とありますがラン科ではなく葉が平べったく長いのでランと付いたようです。ラン科ではないのにランの名前が付いている「オリヅルラン」とか「クンシラン」などと同じですね。

     余談ですがオリヅルランもリュウゼツラン科ですので、このアオノリュウゼツランとは仲間というこになります。にわかには信じがたい事実ですが、サンセベリア(トラノオ)なども仲間と聞けばこちらは何となく解る気がします。

     余談ついでにもう一つ、多くの品種があるリュウゼツランの中でテキラリュウゼツランというのがあり、この葉を原料にしてつくる蒸留酒があの“テキーラ”です。メキシコのイメージからテキーラはサボテンが原料かと思っていましたが、実はリュウゼツランだったんですね。

    リュウゼツラン8 リュウゼツラン10
     6月24日現在はまだ蕾ができ始めたところでした。国道が通行止めの間に、ミカン畑の手入れで三瓶周りでここを車で通る人から、この日から1ヵ月後の7月25日に「花が咲き始めとるぞ」との情報を頂き、気をヤキモキしておりました。

     アオノリュウゼツランほどではありませんが、首を長~~くして待っていたところ、がけ崩れからちょうど4週間後の8月2日午後から通行できるようになりました。が、一難去ってまた一難、今度は台風12号の影響で雨風で阻止される始末・・・。週末には台風11号が接近するとあって雨が小康状態の内にと本日撮影してきました。

    リュウゼツラン1
     どうもお久しぶり、目立った花が咲くわけでもありませんが、何故か胸がトキメイてしまいます。急にめまいがしそうになったのは、強風でマストが揺れてカメラの液晶画面を見ている内に“船酔い”しそうになったから・・・。

    りゅうぜつらん3
     花はマストの下の方から順に咲いていきますので逆の順序で見ていきます。

     咲き始めた先端近くのを見ると葯(やく:花粉が入った袋)のついた雄しべしか見えません。これは雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)といってなるべく自家受粉しないようにと雄しべと雌しべの出現時期をずらす植物の知恵です。

     雄しべが黄色い色をしていますので黄色い花が咲いているように見えます。花数が多いマスト中段部分はすでに雄しべが枯れ始め、全体に黄色が少し弱く色彩的にはすでに“盛り”を過ぎていました。

     花びらはというと・・・しべを包んでいる周りの黄緑色したカプセル状の部分でしょうか、パカッとは開かないようです。近くで観察できませんので花の構造は定かではありません・・・。 

    リュウゼツラン4
     中段辺りのを見ると、雄しべはすでに枯れてしまい、代わって中心部からは先端に柱頭を持つ棒状の雌しべが出ています。花の中には甘い蜜がたくさんあるそうですよ。

     ちなみに原産地メキシコでは蜜や花粉を食べるオオコウモリが受粉を媒介するそうです。コウモリを相手にするので目立つ美しい花は必要ではなく、そのエネルギーをたっぷりの蜜と花粉を作るほうに注いでいるのでしょうかね。

    リュウゼツラン5
     そして下段、雄しべも雌しべも枯れると花は落下していきます。種ができるのはマストの上部の2~3割で、人口受粉しても他の花は結実しないそうです。ですのでこの下段の写真は「種を作らずに花粉だけを供給してその役割を終えた花」ということになります。

     日本での受粉媒介は蜜を求める昆虫ということになるんでしょうか。1本しかありませんのでうまく自家受粉できればマスト上段で秋には種が見られそうです。まだまだ観察はやめれませんネ。

    リュウゼツラン6
     種で増える以外に、親株の株元で子株を作って繁殖するそうで、初めて花が咲いたここの群生株もこうして増えたと思われます(最初から複数株が投棄?されていたのかも知れませんが)。

     上の写真は他の株からは数メートルも離れた所にポツンと生えている高さ十数センチの子株です。どこからどのようにして、どうしてここに生えているのか・・・このチビ苗一つにしてもまたミステリアスな存在です
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